MAC LIFE通信をお届けします
経済を公共部門と民間の市場に分けるとすると、市場部門の純粋化を目指したのである。
さらに03年の総裁選再選を経ると、K首相は従来の持論であるCも実行の工程にのぼらせるようになる。
こちらは、公共部門のスリム化である。
郵貯民営化においては、「民にできることを民に」と調われた。
けれどもそれには何が「公」であるのかが問われねばならない。
だがそうした問いは立てられなかった。
民営化すること自体を目的としていたのだろう。
けれどもこういった構図は、早晩暗礁に乗り上げるのではないか。
民営化論は財政構造改革論と結びつけられ、Aの緊縮財政を重視するなかでCの民営化が進められている。
すなわち財政赤字を避けることばかりが課題とされており、今後どのような公共財を創出することが公共部門の役割かという本質論がまったくなされていないのである。
道路やダムがこれ以上は無駄だということには私も賛成だが、といって公共財として提供すべき財がそれでなくなったわけではない。
国民にしても、公共投資そのものに反対しているのではなく、無駄な公共投資をなくすことに関心を寄せている。
道路公団の民営化道路公団の民営化から見てみよう。
不採算の高速道路建設が続いた結果、四公団の抱える債務は40億円に膨れあがった。
そこで民営化論が出てきたのだが、民主党が唱えた高速道路無料化論とともに、支持されたかというとさほどでもなかった。
民営化論にせよ無料化論にせよ、本来国民が求めている議論から論点がずれているらしいのだ。
高速道路にかんしては、1956年に設置された道路整備特別措置法では、借金によって道路を建設しても、一定期間の有料制で償還がすめば無料開放されることになっていた。
「償還主義」である。
この償還主義については、高速道路の使用が一種の賛沢であった時代に立てられた原理であり、賛沢については受益者負担、しかも償還後には無料化されるということで、国民の大半は納得済みであった。
そして道路公団も、償還の終わりとともに使命を終えるはずであった。
ところが当初は86年に償還終了が予定されていたにもかかわらず、首都高から阪神高速、本州四国高速と道路整備が拡大し、償還は完了するどころか先送りとなり、借金が雪だるま式に増えていった。
その結果、四公団の抱える債務は40億円にも膨れあがったのである。
なぜこうしたことが起きたのか。
ここには、T内閣が政令で定め72年に開始した「料金プール制」がかかわっている。
これは「一本の道路の単独収支とはせずに、すべての道路全体で一本とみなして収支を算出する」というもので、そのため高速道路の整備方針が大きく変更されたのである。
「償還主義」だと、路線の受益者からのみ料金を取る受益者負担が原則であるし、それも償還が終われば無料化される。
新たに路線整備を行おうとするならば、路線ごとに収益性から「無駄か有用か」という議論が行われねばならない。
また、赤字が予想される路線ならば税などで補填されるしかし民営化となれば、今後高速道路については、収益の有無で建設決定がなされることになるだろう。
公共性があると国民が判定する可能性のある路線さえも敷設されなくなってしまうかもしれない。
現在では、高速道路は賛沢品ではなくなっている。
鉄道運賃が高く、羽田など国内線の空港まで主要駅からの移動に時間がかかる現状では、遠方へ赴くにも自動車を交通手段とする家庭は珍しくない。
とするならば、たとえ赤字でも公共資本として有用な高速道路は、可能性としては存在することになろう(ちなみに私は自動車嫌いなので、高速道路は全廃してもらっても一向に構わないが、それも別途公共性を論じる必要がある。
つまり公共財としての有用・不要が審査されるという本来の形に戻るはずであった。
ところが「料金プール制」は、そうした議論や区別を一切封じてしまった。
新たに高速道路が建設されれば借金が増え続け、過去に償還済みの高速道路からの料金収入がそちらに流用されてしまうのである。
そのためいつまでも無料化は実現しないし、利用者は受益していない道路の建設に対しても料金を払うことになる。
何より、「無駄か有用か」の議論なしに道路が造り続けられてしまうのだ。
高速道路の民営化を国民が支持しているのだとすれば、それは納得していた償還主義がいつのまにか反故にされていたからだろう。
償還主義に立ち戻ろうというのが道路公団改革の本筋だったはもちろん同じ目的地に向けて何本も道路を設けることは無駄だから、避けなければならない。
けれどもそれを避けるための判断を収益性だけにすると、今度は、赤字だが公益性を有している道路までが建設されなくなってしまう。
国民が求めたのは、公共財についての判断を主体的に行うことであろう。
では、郵政民営化についてはどう考えるべきか。
「郵政民営化の基本方針」が2004年9月に閣議決定され、以来「明治以来の大改革」が進められてきた。
その過程で現状維持派と民営改革派とが対立してきたが、05年9月の衆院選でのJ党圧勝を経て、10月には郵政民営化法案が最小限の修正で成立した。
これで07年10月から民営化がスタートする。
けれどもこの郵政改革は、K首相の持論であることを除けば、唐突である感は否めない。
郵政公社が何らかの決定的な不始末をしでかしたわけではないし、郵便事業はここ数年、後述する「トヨタ生産方式」を導入してまで効率化に励んでいた。
では、民営化推進論者は、どのような論理によって郵政を構造改革の「本丸」に仕立て上げているのか。
郵政公社は、国鉄や電電公社、道路公団のように単一かそれに近いサービスを提供していたのではない。
郵便事業・郵貯・簡保の三事業で、モノだけでなくカネの流れも扱ってきた。
それを分離すべきだというのが第1点。
第2は、郵貯は民間銀行とは違い預金保険料などを免除されており、銀行との競争条件が公正ではないという点。
第3に、そこで集められた郵貯や簡保のもたらすカネの流れが財政投融資に回り、最終的に特殊法人を支えて、それが無駄を生み出しているという疑いがある。
無駄は、税の投入という「見えない国民負担」で解消されている。
第4に、郵貯・簡保は国債を大量に買い込んでおり、それが日本の資産市場を歪めている、官に向かったカネを民に流すべきだ、という批判である。
第5に、三事業の間でもカネは支え合いに使われている。
郵便事業で値上げをする一方、小包分野では値下げを行ってきたのは、信書配達の独占利益を融通したのではないか。
この疑惑については宅配便会社が提訴していた。
要するに郵政改革は、三事業の連関を絶ち、郵便事業を分離民営化して信書配達を競争させ、郵貯・簡保を国債や財投・特殊法人から切り離して、資金を民間に向けさせようとするものなのである。
ここには資本市場の純粋化と郵便事業の民営化、特殊法人改革までが含まれている。
その包括性ゆえに、郵政改革は構造改革の「本丸」と呼ばれたのである。
05年現在は政府が郵便と貯金・保険の各部門を持つ日本郵政公社を保有しているが、07年10月には窓口会社・郵便会社・貯金会社・保険会社の4社に分割、それぞれの株の100%を持株会社が保有し、さらにその株すべてを政府が保有するという形で民営化がスタートする。
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